
木内克による「裸婦レリーフ」作品です。額装された縦長の構図の中に、立ち上がる女性像が浮かび上がるように刻まれており、赤土と白のコントラストが素材の力強さを強調しています。
木内克(1892–1977)は、近代日本の具象彫刻に革新をもたらした存在であり、ロダンをはじめとする西洋近代彫刻の影響を受けつつも、日本的な簡潔さと静けさを融合させた作風で知られています。量感を重視した表現は、躍動感と安定感を同時に生み出し、人体像に独特の生命力を与えています。本作でもその特徴は顕著で、女性像のフォルムは単純化されながらも、身体の重心や動きが的確にとらえられ、素材そのものが発する質感とあいまって「存在の厚み」が感じられます。
また、平面性と立体性が交錯するレリーフ表現は、彫刻でありながら絵画的な要素をあわせもち、いわば「浮き彫りのキャンバス」とも言える試みです。背景と身体の境界は曖昧に処理され、まるで素材から自然に人の姿が立ち現れてきたかのような効果を与えています。これは木内彫刻の特徴である「素材と造形の一体化」を示す好例といえます。
木内克は裸婦像を多く制作しましたが、それらは単なる美的対象ではなく、人間の存在そのものを凝縮させた象徴的モチーフとして扱われています。本作もまた、女性像を通じて生命力や精神性を体現し、古代彫刻的な厳粛さとモダンな造形感覚が融合した作品といえるでしょう。
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