
こちらは豊原国周の梅幸百種之内「柳桜東錦絵(やなぎさくらあづまのにしきえ)袴たれ 袴垂保輔」です。
「梅幸百種(ばいこうひゃくしゅ)」とは、梅幸という歌舞伎役者が扮した100種の役を豊原国周(とよはらくにちか)が版画であらわしたもので、梅幸とは幕末から明治にかけて活躍した名優、五代目 尾上菊五郎の俳名です。全100図にわたって描き出した国周の晩年の代表作として知られています。
袴垂と保輔はもとももとは別の人物でどちらも悪党、保昌というところが共通していたためか、のちに『続古事談』で「袴垂保輔」という架空の人物が想像されてしまったそうです。大盗賊の袴垂は、笛を吹きながら泰然と歩く男を襲おうとしますが、その威厳に気圧されへたり込んでしまいます。男の正体は頼光とともに酒呑童子退治にも同行した武将 藤原保昌(本図右上)でした。保昌は彼を家へ連れて行き、「服が必要なら言いなさい、罪を犯すな」と厚い着物を与えます。袴垂は深く恐れ入り、逮捕後に「並々ならぬ人だった」と語った、と平安後期の説話集『今昔物語集』に書かれていると言われています。
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