
第一次世界大戦期にフランス陸軍航空隊で使用されたと推定される、軍用の航空機搭載型時計をお譲りいただきました。文字盤にはフランス語で「PROPRIÉTÉ DE L’AVIATION MILITAIRE(軍用航空部隊の所有物)」と記されており、明確に官給品であったことが示されています。
この時計は、12時間表示と24時間表示のダブルスケール文字盤を備え、さらに12時位置にはスモールセコンドを配した構成となっております。黒のアラビア数字と赤の24時間表示が大きく描かれ、飛行中でも視認性が高く、航空任務中の時刻確認に適したデザインが採用されています。また、リューズが6時下方向に設けられている点は、一般的な時計とは異なり、航空機の計器盤に取り付けるボードクロック型であったことを示唆しています。
同型の時計は、フランス航空隊の記録の中でも1915年前後に製造されたとされ、コックピット内で使用された計器の一部として位置づけられます。今回のお品も、構造や表示形式、リューズの位置などから、その時代の航空用途に特化した仕様であることが読み取れます。
裏蓋内部の刻印等は未確認ですが、文字盤や構造から判断するかぎり、当時フランス軍に時計を供給していた複数のメーカーによる製造である可能性が高く、無銘ながらも当時の標準的な軍用時計の形式をよく伝えています。
こうした時計は、戦時下の特殊任務用として製作されたことから現存数は限られており、市場においても比較的出回りにくい部類に入ります。装飾的な要素はありませんが、その分、実用性と簡潔な構造に重きを置いた設計が印象的で、軍用時計の一類型として資料的な価値があるお品でした。
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