
中国近代絵画の巨匠・呉昌碩による藤の花の掛軸です。呉昌碩は清末から民初にかけて活躍した文人画家であり、書・画・印を兼ね備えた「三絶」の芸術家として広く知られています。その花卉画は今もなお国内外の美術市場で高い評価を受けています。
本作は、春を代表する藤の花を題材とした一幅です。藤は古来より長寿や繁栄を意味し、その長く垂れ下がる花房は豊穣や吉祥の象徴とされてきました。画面には、力強い墨線で描かれた蔓や葉が大きな動きを見せ、そこに青紫の房花が点々と彩られることで、生命感あふれる春の風景が表現されています。
呉昌碩は牡丹や菊、梅といった四君子のほか、石榴や藤といった吉祥的な花卉を好んで描いたことで知られています。中でも藤花は、豪快にうねる枝と、そこから垂れる花房の対比によって画面に独特のリズムを生み出す格好の題材でした。本作においても、奔放な構図と太く力強い筆致、そして淡彩の柔らかな色調が見事に調和しており、呉昌碩の「写意花卉図」の真髄を感じさせます。
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