
浮世絵師 歌川国貞(三代目歌川豊国)による1858年の二枚続の作品です。
歌舞伎の「絵本太功記」の有名なワンシーンが描かれています。
「絵本太功記」は豊臣秀吉をモデルにした「武智光秀」と、その仇敵「真柴久吉」を中心に、本能寺の変や山崎の戦いを脚色した物語です。
左から、初代河原崎権十郎(武市十次郎役)、初代中村亀之丞(その妻・初菊役)、そして四代目尾上菊五郎(十次郎の母・操役)が右上に描かれています。
本来は、祝言をかわしたばかりの十次郎の初陣を妻の初菊が泣く泣く送り出す…という悲劇のシーンなのですが、本作の初菊は邪魔をするように刀の鞘をとってニヤリと誘惑的に笑い、十次郎は困り顔、右上で十次郎の母が怒り顔で見ている…というユーモラスな描かれ方をしています。
これが浮世絵役者絵の面白いところであり、芝居の筋を忠実に描くだけではなく、本作のようにブラックジョーク的な意趣返しをするパターンもありました。当時の国貞には特に歌舞伎の女性ファンが多く、美女にユーモラスな表情をさせたり、嫁と姑との衝突などのコミカルな要素を加えることで、色恋ドラマに憧れる江戸の歌舞伎ファンを熱狂させました。
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