
浮世絵師 歌川国芳(一勇斎國芳)の作品です。歌舞伎役者の八代目市川団十郎が演目「雷神不動北山桜」の「鳴神」の幕で鳴神上人(なるかみしょうにん)を演じたシーンを描いたものとなります。
鳴神上人は朝廷に恨みを抱いており、竜神を滝壷に封じ込めて干ばつを引き起こしました。しかし朝廷が遣わした雲の絶間姫(くものたえまひめ)に誘惑され、酒に酔ったすきに、竜神を封じ込めたしめ縄を姫に切られてしまい、雨が降ってしまいました。この作品で描かれているのは、姫にだまされたと知った鳴神上人が、庵室の柱に手をかけ、雨の中怒り狂っている…という有名なラストシーンです。
鳴神上人が柱にしがみついているように見えるのは、歌舞伎の演出でよく使われる決めポーズ(見得)です。「柱巻の見得(はしらまきのみえ)」とも呼ばれ、柱を両手で抱え、片足も巻いて止める演技で、座頭のみが許されるものとされてきました。
また、この版画は「一勇斎國芳」名義の署名でなく「国芳」とあり、本来赤かった部分が青白くなり、着物の模様など全体的に簡略化されている「後擦り」と呼ばれるものです。同じ版の作品でもかなり雰囲気が異なるのも面白い点です。
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