
三代 歌川豊国(歌川国貞)による浮世絵「東海道五十三次之内 小田原 飯沼勝五郎(おだわら いいぬまかつごろう)」です。
「役者見立東海道」と呼ばれるシリーズ作品の一つで、手前に役者絵、背景に演目や登場人物に関係する宿場の風景(この場合は小田原)が配されており、歌舞伎役者が演じる「飯沼勝五郎」を演じている様子が描かれています。
この浮世絵に描かれている歌舞伎の演目は『箱根霊験躄仇討(はこねれいげんいざりのあだうち)』という実在の仇討ち事件を基にしたもので、飯沼勝五郎は、妻の初花(はつはな)と共に敵討ちの旅をする主人公です。
本品では、主人公の飯沼勝五郎が足腰の自由を失い、杖(または竹)をついて妻・初花と共に仇討ちの旅を続ける途中のシーンを描いています。背後には小田原の酒匂川の渡し場と箱根の山々が描かれており、旅の過酷さと情景を表しています。勝五郎が竹杖を手に、前を見据える表情には、足が不自由(躄=いざり)となり苦難の中でも仇討ちを成し遂げようとする強い決意が感じられます。
この場面は、物語の中盤における夫婦の苦難と決意の象徴的なシーンと言えます。
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