
月岡芳年(1839-92)による浮世絵「月百姿 左側: 世尊寺の月 少将義孝/右側: 千代能かいたゝく桶の底ぬけて みつたまらねは月もやとらす」です。
「月百姿(つきのひゃくし)」は月をテーマとした全100点揃の大判錦絵で、のべ8年を掛けて完結し、月岡芳年(つきおかよしとし)の最後の大作・代表作の一つと評価されています。
左側は、平安中期の公家・歌人である藤原義孝(ふじわらのよしたか)です。彼は『小倉百人一首』にも選ばれている歌人で、容姿端麗な貴公子として知られていました。 信仰心の厚かった義孝が、月夜に世尊寺で法華経を読誦し、極楽往生を祈る姿が描かれています。彼は流行病(疱瘡)により、21歳の若さで亡くなりました。
右側に描かれているのは、鎌倉時代の女性で、仏門に入ったとされる安達千代能(あだち ちよの)です。本図は、彼女が水を汲もうとした際、古くなった桶の底が突然抜け、水面に映っていた月が消えてしまった瞬間を描いています。この出来事から「桶の底抜けてみづたまらねば月もやどらず」という、悟りの境地を詠んだ有名なエピソードに基づいています。
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