
こちらは江戸の花名勝会のうち「り 十番組 尾上菊次郎/浅茅ケ原衣掛松/浅茅原」です。
「江戸の花名勝会」は歌川豊国三代(初代国貞)の役者絵を中心に、複数の絵師の絵を一枚に配した 「貼交絵(はりまぜえ)」。江戸町火消「いろは四十八組」の各組を代表する名所旧跡を紹介する形で、絵には各組の纏が描かれ、また、その地にゆかりの歌舞伎の演目、当時の人気歌舞伎役者などが描かれています。
役者絵は「一ツ家の賤の女(ひとつやのしずのおんな)」に扮する二代目 尾上菊次郎が描かれています。浅茅ケ原には「浅茅ヶ原の鬼婆(あさぢがはらのおにばば)」という伝説があります。浅草の荒野に住む老婆が、宿を貸した旅人を石で殴り殺して金品を奪って生活を慕いました。一緒に住んでいた心優しい娘が母を改心させるため、旅人を逃がして自ら身代わりとなって布団に寝た結果、暗闇で娘を殺してしまった老婆は、絶望して池に身を投げた、という伝説です。本図に描かれたのは恐らく、その娘の方かと思われます。
上部に描かれた徳利、一合徳利が登場したのは江戸時代と言われています。当時は、酒の品質が悪く酸味が強かったため熱燗で飲むのが一般的でした。本図のように熱い徳利で漆塗りのテーブルを傷つけないよう、徳利は「はかま」に入れるのが習わしだったと言われています。
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