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作品の査定・評価について
徐悲鴻の作品を高く評価しております。
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近代中国絵画の父と称される徐悲鴻(じょひこう / シュー・ベイホン、1895年 - 1953年)は、伝統的な中国画に西洋の写実主義を融合させ、中国美術の近代化を成し遂げた不世出の芸術家であり、教育者です。1. 生い立ちと初期の研鑽
徐悲鴻は1895年、江蘇省宜興の貧しい画家の家庭に生まれました。幼少期から父・徐達章に習字と伝統的な中国画を学び、早くからその才能を開花させました。
1915年に上海へ渡ると、そこで康有為などの進歩的な知識人と出会い、思想的影響を受けます。彼は「中国画の改革には西洋の写実主義を取り入れる必要がある」という信念を抱くようになり、1919年、政府の公費留学生としてフランスへ渡りました。
パリでの修行
パリ国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)に入学した徐悲鴻は、パスカル・ダニャン=ブーベに師事し、徹底した素描(デッサン)と解剖学、油彩画の技術を習得しました。彼はベルリンやベルギーなど欧州各地を巡り、古典主義からロマン主義までの名画を模写し、人体把握の基礎を固めました。この時期の経験が、後に彼の「形を重んじる」作風の根幹となります。
2. 「中西合璧」の芸術哲学
徐悲鴻の最大の功績は、中国の伝統的な「筆墨」と西洋の写実的なフォルムを融合させたことにあります。
写実主義の導入
当時の中国画は、文人画の伝統が様式化し、創造性を欠いた「模倣」に陥っていると彼は批判しました。
「法に依って造る」: 彼は「優れた法は守り、欠けているものは補い、良くないものは改める」という現実的な改革案を提示しました。
素描の重視: 「素描は一切の造形芸術の基礎である」と説き、正確な骨格や筋肉の動きを表現することを重視しました。
代表的な画題:馬
徐悲鴻といえば、といわれるほど有名な画題「奔馬(ほんば)」図です。
彼の描く馬は、従来の中国画のような平面的な線だけではなく、西洋画の陰影法や解剖学的な正確さが取り入れられています。激しく駆ける馬の姿は、当時の抗日戦争下にあった中国国民の「不屈の精神」や「自由への渇望」を象徴するものとして、絶大な支持を得ました。
3. 社会的メッセージと歴史画
彼は単なる風景画家ではなく、時代の苦難をキャンバスに刻む社会派の芸術家でもありました。
『田横五百士』: 500人の義士が節義を守って自決する歴史物語を描き、外敵に屈しない民族の気概を表現しました。
『九方皐(きゅうほうこう)』: 優れた馬を見抜く名人の姿を通じ、人材登用の重要性を説きました。
『愚公移山』: 困難な課題に立ち向かう人々の姿を描き、抗日戦争に立ち向かう中国人民を鼓舞しました。
これらの作品には、西洋の群像画の構図と中国の精神性が高度に同居しています。
4. 教育者としての足跡
徐悲鴻の功績は、自身の作品制作に留まりません。彼は中国の近代美術教育システムを構築した最大の功労者です。
美術教育の改革
帰国後、彼は国立中央大学(現在の南京大学)や北平芸術専科学校などで教鞭を執りました。
素描を必修化: 伝統的な山水画を学ぶ学生にも、西洋的なデッサンを義務付けました。
写生(スケッチ)の推奨: 古人の手本を模写するだけでなく、山や川、市井の人々を直接観察して描くことを促しました。
弟子の育成: 呉作人や李可染といった、後に中国画壇を担う巨匠たちを数多く育て上げました。
1949年に中華人民共和国が成立すると、彼は初代の中央美術学院院長および中華全国美術工作者協会主席に就任し、国家レベルでの美術振興を指揮しました。
5. 評価と後世への影響
徐悲鴻の評価は、時代によって揺れ動いたこともありますが、現在では「中国近代美術の開拓者」としての地位は揺るぎないものとなっています。
肯定的な評価
技術の向上: 中国画に欠けていた立体感、空間構成、解剖学的正確さを補完したこと。
芸術の民主化: 高潔な文人だけの遊びだった絵画を、民衆の苦難や民族の誇りを伝える「力」に変えたこと。
批判的側面(論争)
一部の伝統主義者からは「西洋化しすぎて中国画本来の『神韻(精神的な趣)』を損なった」という批判もありました。しかし、彼はあくまで「中国画を滅ぼすためではなく、救うために西洋の手法を用いた」のでした。
徐悲鴻は、激動の20世紀中国を駆け抜けた奔馬のような芸術家でした。彼はフランスで学んだ高度なアカデミズムを、自身の血肉である中国の墨と紙に叩きつけ、世界に通用する新しい「中国画」を創り上げました。
1953年、58歳の若さで脳溢血により世を去りましたが、彼の遺志は中央美術学院を中心とする写実主義の伝統として今も息づいています。北京にある「徐悲鴻記念館」には、彼の愛した作品やコレクションが展示され、今も多くの美術ファンや学生が訪れています。
「人には傲気(おごり)があってはならないが、傲骨(誇り)がなくてはならない」
この言葉は、彼の芸術人生そのものを表しています。
徐悲鴻の代表的な作品
- 「田横五百壮士」
古美術永澤より徐悲鴻買取のポイント
徐悲鴻は中国近代絵画を代表する作家で、西洋的写実を墨で表現した力強い馬の絵を多く残し、評価の高い作家です。人気があることから印刷工芸や偽物も多く出回っています。もしお手元に気になる作品がございましたら、ぜひ一度古美術永澤にご相談ください。





