
飯塚琅玕斎 花籃
竹工芸の名匠、飯塚琅玕斎による花籃(かかん)をお譲りいただきました。
精緻に編み込まれた胴部の構造美と、伸びやかな曲線を描く持ち手の意匠が見事に調和した、端正で格調高い逸品です。
胴は下部に太めの竹を斜めに組んだ力強い造形が見られ、上部にかけては細やかな網代編みが施され、柔らかな陰影が生まれています。
素材は上質な竹と籐が用いられており、特に口縁部の巻縁処理には高度な技術と丁寧な仕上げが感じられます。
持ち手部分には「琅玕斎」の銘が彫刻されており、共箱にも同銘と「花籃」の題が墨書されておりました。
飯塚琅玕斎は明治から昭和にかけて活躍した竹芸界の第一人者であり、伝統的な技術を昇華させた洗練された作風で知られています。本作もまた、鑑賞性と実用性を兼ね備えた彼の代表的な作例のひとつといえるでしょう。保存状態も良好で、経年による色艶の深まりが全体の趣をより引き立てておりました。茶道具としての需要はもとより、近年では海外美術市場でも高く評価されていることから、専門的な観点より高く評価させていただきました。