
雛こけし
先日、お客様より、大切にされてきたお道具の数々をお譲りいただきました。その中に、ひときわ目を引く愛らしいお品がございました。こちらの「雛こけし」です。
こけしは、一般的には東北地方で生まれた伝統的な木地玩具として知られています。その素朴な造形と、温かみのある木肌が特徴ですが、今回お譲りいただいた「雛こけし」は、通常のこけしとは一線を画す、非常に珍しいお品です。
男雛は濃紺を基調としたシックな着物、女雛は紅色の華やかな着物をまとい、それぞれに可憐な菊の花々が描かれています。この絵付けは、職人の手によって一つ一つ丁寧に描かれたものです。特に注目すべきは、着物の下の木地に描かれた文様です。木肌を活かして鳥が描かれており、全体に奥行きと立体感が生まれています。
また、頭部と胴体のバランスも絶妙です。通常のこけしよりも頭部が小さく、胴体が長めに造形されており、雅な装束をまとったかのような優美な立ち姿を表現しています。このプロポーションは、お雛様としての格式と品格を保ちつつ、こけしならではの愛らしさを両立させています。
さらに、頭部にはそれぞれ髷が結われ、細い線で描かれた目や口元は、穏やかで優しい表情が宿っています。年月を経たことで、木肌には美しい飴色が深まり、さらに味わい深い風合いを醸し出しています。
こけしは、その産地や系統によって様々な種類がありますが、「雛こけし」は、こけし蒐集家の方だけでなく、雛人形や節句のお道具に関心のある方々にも人気があります。
古美術品は、単なるモノではなく、そこに宿る人々の想い、そして時を超えて受け継がれてきた物語を伝える存在です。お手元に、大切にされてきたお品がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤にご相談ください。お客様の思い出と共に、その価値を丁寧に拝見させていただきます。
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