
名古屋の陶工、川口文左衛門が手掛けた白薩摩の飾壺をお譲りいただきました。壺の首の部分には十六弁菊花紋が描かれ、胴には金彩を多用した華やかな花鳥図が広がっています。豪華さと格式をあわせ持つ一品です。
川口文左衛門は、明治から大正にかけて名古屋で活躍した陶工です。当時の名古屋は京都と並び、薩摩焼の技法を取り入れた陶磁器の産地として大きな役割を果たしました。特に輸出向けの陶磁器が盛んに作られ、西洋の人々が好む細かく華やかな金彩や絵付けが施されました。
この壺に大きく描かれた菊花紋は、日本の皇室の象徴であり、品物に特別な格式を与えています。こうした図柄は、日本文化を象徴するものとして海外のコレクターにも高く評価されました。当時の国際交流の中で、日本の陶磁器がどのように受け入れられたかを示す好例といえます。
さらに底面には「愛知縣名古屋 川口文左衛門製」と刻まれており、製作者がはっきりわかる点は大きな強みです。名古屋で作られた薩摩焼は、今では「名古屋薩摩」と呼ばれ、明治期の輸出陶磁を代表する存在となっています。その中でも作者名のある品は特に珍しく、高い評価を受けています。
この川口文左衛門の白薩摩飾壺は、名古屋の陶磁器が果たした歴史的な役割を示す貴重な資料であり、美術品としても収集品としても優れた価値を持つものといえるでしょう。
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