
島岡達三作の夫婦湯呑
先日、お客様より、重要無形文化財「民芸陶器(縄文象嵌)」保持者(人間国宝)である島岡達三氏の希少な夫婦湯呑をお譲りいただきました。
今回のお品は、島岡達三の代名詞ともいえる「縄文象嵌」が施された、味わい深い作品です。象嵌によって表現された独特の文様は、見る者の心を惹きつけます。単なる器としての美しさだけでなく、民芸という哲学が込められた、用の美を体現しています。お湯を注ぎ、湯呑を手に取った瞬間に、その温かみと奥深さを感じることができます。
島岡達三は、栃木県益子町を拠点に作陶活動を続け、民藝運動の精神を継承しました。柳宗悦らが提唱した「民衆の工芸」を意味する民藝という考え方は、日常の生活で使われる工芸品の中にこそ美しさがあると説くものです。島岡氏の作品もまた、その哲学を色濃く反映しており、日常の生活に溶け込みながらも、確固たる存在感を放っています。
作品の状態は良好で、割れや欠けはもちろんのこと、使用感もほとんど見られませんでした。大切にされてきたことが、ひと目で伝わってきます。また、共箱も完備しており、作家の署名と印が鮮明に残っていました。作品の真贋を確かめる上で、共箱の有無は非常に重要なポイントとなります。
今回の査定では、作品自体の希少性、保存状態の良さに加え、共箱の存在を評価させていただきました。島岡達三の作品は国内外で人気が高く、特に今回のような箱付きの美品は、市場でも高い需要があります。
私たちは、お客様からお預かりした大切な美術品や工芸品を、単に「モノ」として評価するのではなく、その作品が持つ歴史や作者の哲学、そして何よりお客様の想いにも寄り添った査定を心がけております。お客様がこれまで大切にされてきたお品を、次に大切にしてくださる方へと橋渡しする。それが私たちの使命です。
お手元に、買取を検討されている陶磁器や美術品、骨董品はございませんか。今回の島岡達三の作品のように、作者や作品名が分からなくても、私ども古美術永澤のベテラン査定士が丁寧に拝見し、適正な価格をご提示いたします。大切なご家族から受け継いだお品や、整理を検討されているお品がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。誠心誠意、ご対応させていただきます。
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