
本作は近代日本画の巨匠、奥村土牛による「蜜柑」を題材とした掛軸です。淡い背景に鮮やかな橙色の果実を描き、添えられた青緑の葉が清涼感を与えています。対象を簡潔に捉えながらも、色彩の調和と余白の美が際立ち、土牛ならではの清澄な画風が存分に発揮された一点です。
奥村土牛は、花鳥・山水から風景に至るまで幅広い作品を残し、その端正で格調高い日本画表現で高く評価されました。代表作「鳴門」「醍醐」「吉野」など大作に比べ、本作のような品はより身近な自然の美を主題とし、親しみやすい魅力があります。特に「蜜柑」という題材は、日本人にとって冬の風物詩であり、鮮やかな色彩と素朴な形に土牛の温厚で誠実な作風が重なり、季節感と生活感を伝える作品となっています。
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