
堆朱(ついしゅ) 牡丹彫香合
蓋面に牡丹の花が見事に彫刻された堆朱(ついしゅ)香合をお譲りいただきました。堆朱特有の深い朱色の発色と、長年の使用により生まれた自然な艶が、格調高い美しさを物語っています。
堆朱は、木地の上に漆を何十層にも重ね塗りし、乾燥後に文様を彫り込む高度な漆芸技法です。この香合では、朱漆が厚く積層されており、彫刻の断面から美しい層の重なりを確認できます。特に牡丹の花弁部分では、立体感を出すために深く彫り込まれており、職人の卓越した技術力がうかがえます。
蓋面を飾る牡丹文様は、「花王」とも称される花らしい堂々とした構図で表現されています。中央の大輪の牡丹を中心に、周囲に葉文様が配され、調和の取れた構成となっています。牡丹の花弁は一枚一枚丁寧に彫り分けられ、自然な花の姿を見事に表現しています。
香合は茶道において香を焚く際に用いる重要な道具です。特に堆朱の香合は、その重厚感と品格により茶席を格調高く演出します。この香合は実用性と美術性を兼ね備えた逸品です。蓋の合わせも精密で、長年の使用にもかかわらず歪みがなく、製作時の高い技術水準を示しています。
漆の艶は自然な経年変化により落ち着いた風合いを見せており、むしろ古雅な趣を添えています。彫刻部分の細部まで明瞭に残っており、ヒビはあるものの美しさを保持しています。
堆朱香合は製作に高度な技術と長い時間を要するため、現代では入手困難な貴重品です。この香合は技法の確かさ、図案の美しさ、保存状態の良さという三つの要素が揃った優品として、適正な評価をさせていただき買取いたしました。茶道具としての実用価値はもちろん、漆芸品としての美術的価値も高く評価できる逸品です。
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