
ガラス製のオイルランプです。上部にはデイジーの模様を施したすりガラスのグローブを備え、下部に至るまで透明なガラスで構成された一体型の姿が特徴的です。
ヴィクトリア朝期のオイルランプといえば、真鍮やブロンズの台座を持つ豪華なタイプが主流で、当時の中産階級の家庭では家具的な調度品として位置づけられていました。その中にあって、本作のように台座までもガラスで統一したランプはやや異色の存在です。金属製に比べ安価で、より広い層の家庭に普及しやすかったと考えられます。
一方で、この総ガラス製の構造は、廉価な実用品としての意味合いにとどまらず、光を透かすガラスの美を隅々まで取り入れようとする発想でもありました。掃除の容易さや実用性を備えつつ、生活の場に工芸的な透明感をもたらした点は、民衆的な美意識をよく映しています。
今日では、真鍮台座の華美なランプに比べると残存数が少なく、生活史的な背景を伝える資料として貴重です。華やかさよりも日常性に根ざしたガラスランプであり、ヴィクトリア朝期の暮らしの中で実際に使われた「庶民の明かり」として評価すべき一点といえるでしょう。
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