
イギリス・ドルトン社ランベス工房により1883年制作された、炻器(ストーンウェア)の装飾花瓶です。
素地は磁器ではなく炻器で、厚みと重みを備えた落ち着いた質感が特徴です。胴部には粒状の点盛り(ビーズ状の小さな盛り上がり)を組み合わせた帯文がめぐり、白・青・茶を基調とした釉薬の彩りが幾何学的に構成されています。規則的なパターンの中に東洋趣味を取り入れた意匠は、ヴィクトリア後期の美意識を反映したものといえます。
19世紀後半のドルトン・ランベス工房は、陶芸と工芸美術の新しい方向性を切り拓いた存在でした。とりわけ、表面に浮き彫り状の模様をふんだんにあしらった炻器は、アーツ・アンド・クラフツ運動や審美主義運動の影響を受け、実用品から芸術品へと格を高める役割を果たしました。
補足:炻器(せっき)・ストーンウェアとは
炻器とは、陶磁器の一種で、陶器と磁器の中間的な性質を持ちます。焼成温度は約1200〜1300℃と高く、素地が緻密で水を吸いにくく、陶器より硬いのが特徴です。ただし磁器のように白く透けることはなく、落ち着いた土味を残しています。西洋ではビールジョッキや壺、日本では信楽焼や常滑焼などが代表例として知られています。
関連買取実績
-
2025.09.04
-
2025.09.03
-
2025.09.03
-
2025.09.03