
インドの化粧具「スルマ」を塗るためのアイライナースティックです。細長い棒の先がわずかに丸められ、上部には柔らかな身体表現の女性像が立体的にあしらわれています。像の耳たぶには大きめの穴が左右に開いており、携行用の紐や小さな鎖を通して使われた痕です。
スルマとは、目もとの内側に細く黒い線を引くための伝統的な化粧品です。煤や鉱物の粉に油や澄ましバター(ギー)を混ぜて練り、粘りのある黒色のペーストにして使います。男女ともに用いられ、目を大きくはっきり見せる化粧としての目的のほか、太陽のまぶしさよけや邪視よけとしての信仰的な意味も持ちます。
女性像のポーズは、足裏を頭の上に付けるような曲芸的な姿で、合掌から棒がすっと延びるデザインになっています。インドの小金工では、舞姫やヨーギニーのような躍動的な人の像を持ち手に用いる作例が多く、本作もその系統の意匠といえます。
単なる化粧用具にとどまらず、身だしなみと装飾性が一体化した点がこの品の魅力です。
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