
向井潤吉による「寺泊より佐渡遠望」です。本作は、新潟県の海辺の町・寺泊から遠方に佐渡島を望む景観を描いた作品で、向井が得意とした茅葺き民家と自然風景を重ね合わせた画題となっています。手前に描かれた茅葺き屋根の民家は、生活の息遣いを伝えるように温かみを持ち、背後には雄大な山並みと海の広がりが感じられ、画面全体に静かな力強さが宿っています。
寺泊は古くから北陸と越後を結ぶ交通の要衝として栄え、江戸時代には北前船の寄港地としても知られた港町です。そこから望む佐渡島は、古来より金山で名を馳せ、日本の歴史と経済に大きな影響を与えました。
向井潤吉は戦後一貫して「日本の民家」を描き続け、失われゆく原風景を記録し後世に伝えることを画業の使命としました。本作においても、雪深い越後の気候に適応した堅牢な茅葺き民家が描かれ、生活と自然が一体となった風景が鮮やかに浮かび上がっています。
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