
清水達三による日本画「舞妓」です。紅の着物をまとった舞妓を横向きに捉え、背景の白い薔薇が清楚さを引き立てる一作。面相筆の細やかな線と、肌・布・髪飾りの素材感を描き分ける岩絵具の重ねが、人物の気品と静けさを端正に伝えています。
清水は日本画壇の人物画系譜で学び、京風美人画の抒情と礼節を尊ぶ価値観に親しんでいました。
舞妓は「所作・装い・四季」を一身に表す格好の題材で、品位ある女性像の理想を描き出すのに適していました。
胡粉で整える肌の明度、友禅の柄や帯の織文様、簪や髪の艶、うなじの陰影など、細い線と平面、質感の表現を総合的に試せる主題が舞妓です。清水の持ち味である「端正な輪郭」「濁りの少ない色調」「静謐な余白」を最も純度高く示すことができるモチーフです。
また、舞妓の装いや髪飾りは季節で変わります。背景の花や小道具を添えることで、同じ主題でも物語と情緒を変えることができ、連作としての幅が生まれます。本作の白薔薇も、無垢さと静かな華やぎを象徴する要素として機能しています。
戦後以降の日本画コレクションでは、居室に調和する端麗な人物画の需要が根強く、舞妓は時代・地域を問わず支持を得てきました。清水はこの需要を意識しつつ、装飾性に偏らない「気品と静けさ」の像として多くの舞妓作品を残し、評価を確立しました。
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