
志村立美による美人画作品「娘」です。楚々とした横顔の女性が描かれ、柔らかな白肌と控えめな表情に清らかな気配が漂います。黒髪を結い上げ、かんざしと花の髪飾りを添えた姿は、古典的な美意識を感じさせながらも、凛とした現代性をも併せ持っています。淡い衣裳の縞模様と、袖口にのぞく赤の挿し色が、画面に品格と華やぎを与えています。
志村立美(1907–1980)は群馬県高崎市に生まれ、山川秀峰に師事して美人画を学びました。挿絵画家としてデビューし、林不忘の小説『丹下左膳』の挿絵で注目を集め、岩田専太郎・小林秀恒と並んで「挿絵界の三羽烏」と称されました。戦後は挿絵活動にとどまらず、肉筆による美人画を多数発表し、その典雅で気品ある女性像は高い人気を博しました。1976年には作品集『美人百態』を刊行し、美人画家としての地位を確立しています。
本作「娘」もまた、志村が得意とした清楚な美人画の典型であり、切れ長の瞳や白磁のような肌の描写は“立美美人”と呼ばれる様式です。
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