
川瀬巴水による木版画「鳴沢乃富士」です。川瀬巴水(1883–1957)は新版画運動を代表する画家であり、大正から昭和にかけて日本各地を旅し、風景を抒情的に表現したことで「昭和の広重」と称されました。彼の作品は、伝統的な浮世絵版画の技法に西洋的な写実感や陰影を取り入れ、近代の日本風景を詩情豊かに描き出した点に特徴があります。
本作「鳴沢乃富士」は、巴水が富士を題材に描いた数多くの作品群の一つで、特に農村風景と富士山を重ね合わせる構成に独自性があります。観光的な名所絵ではなく、庶民の生活と雄大な自然を一つの画面に収めることで、巴水が生涯にわたり追求した日常に潜む美の理念が色濃く反映されています。
巴水は1920年代から30年代にかけて各地を巡り、その土地の情景を版画に残しましたが、富士山を題材とした作品は、海外からも人気があります。
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