
鶴の卵 香合
この度、ご縁あってお客様よりお譲りいただきましたのは、優美な曲線を描く卵形の香合です。一見すると磁器のようにも見えますが、手に取るとその軽さと、わずかに感じる温かみが、この香合が尋常ではない素材でできていることを物語ります。
実はこの香合、なんと「鶴の卵」を素材に作られた珍しい作品なのです。
鶴は古来より「千年生きる」とされ、長寿を象徴する吉祥の鳥として尊ばれてきました。その卵は、単に生物としての卵を超え、神秘的な力を持つものとして信じられていたと伝えられます。その貴重さゆえに、安易に加工されることはなく、特別な機会にのみ、職人の手によって特別な道具へと昇華されたのでしょう。
この香合は、その希少な鶴の卵の殻を巧みに用いて作られています。卵の表面はごく薄いにもかかわらず、丁寧に磨き上げられ、独特のなめらかな質感と光沢を放っています。そして、そこに描かれているのは、まさに「鶴の羽」を思わせる繊細な葉文様。金蒔絵で描かれた文様は、光の角度によって優しく輝き、香合全体に品格を与えています。
特筆すべきは、香合の内側です。蓋を開けると、目に飛び込んでくるのは眩いばかりの金。これは、卵の殻の内側に、薄く金箔が貼られています。光を乱反射させ、香合内部を幻想的な輝きで満たしています。
古美術の世界では、香合一つとっても、その素材や意匠、そして歴史に物語が宿ります。この鶴の卵の香合は、吉祥を願う人々の想いと、それを形にする高度な工芸技術、そして奇跡的な素材との出会いが織りなす、まさに「美の結晶」と言えるでしょう。
古来より、高価な香木や練香を収めるための香合は、単なる実用品ではなく、茶席や書斎を彩る美術品として愛されてきました。この鶴の卵の香合も、持つ人の心を豊かにし、特別な空間を演出する存在であったに違いありません。
もし、ご自宅に眠っている美術品や骨董品がございましたら、ぜひ一度、私ども古美術永澤にご相談ください。一点一点、丁寧に拝見し、その価値を最大限に評価させていただきます。
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