
象嵌(ぞうがん)細工の香合
この度、お客様より、貴重な象嵌(ぞうがん)細工の香合をお譲りいただきました。
今回の香合は、象嵌という高度な技術が随所に光る、まさに工芸の粋を集めた逸品です。
象嵌とは、地となる素材に文様を彫り込み、そこに金や銀、貝、あるいは他の木材といった異素材をはめ込んで装飾を施す技法です。今回お譲りいただいた香合には、漆黒の地に金、銀、そして螺鈿(らでん)が巧みに象嵌されており、光の加減で様々に表情を変える様は、まるで生きているかのようです。
蓋の主役となっているのは、白く輝く螺鈿の牡丹でしょうか。その中心には緑色の螺鈿が配され、まるで朝露に濡れた花びらのように清らかに光を放っています。その周りを囲むのは、金と銀で象られた蔦や葉。金は暖かく、銀はクールな輝きを放ち、それぞれの素材が持つ個性を最大限に引き出しながら、全体として調和のとれた美しい世界を創り出しています。螺鈿の花と金銀の葉が織りなすコントラストは、まるで夜空に咲く幻想的な花火のようにも見えます。
香合は、香を収納するための小さな容器ですが、茶道においては亭主の美意識やもてなしの心を示す大切な道具の一つです。この香合は、蓋を開ける前から見る者を惹きつけ、中にはどのような香が納められているのだろうかと想像を掻き立てます。そして、実際に使われた際には、香りの優雅さと視覚的な美しさが一体となり、茶室の雰囲気をより一層高めてくれたことでしょう。
今回、買取させていただいた香合は、その高い美術的価値と、使う者を心豊かにする美しさを兼ね備えた、まさに名品と呼ぶにふさわしいお品です。日本の伝統工芸の粋を今に伝える貴重な作品として、大切に次の方へと繋いでいきたいと考えております。
お客様が大切にされてきたお品を、これからも大切に扱っていただける方へと橋渡しできるよう、精一杯努めさせていただきます。ご自宅にご不要な古美術品や骨董品がございましたら、ぜひ、古美術永澤にお気軽にご相談ください。専門の査定士が、一点一点丁寧に拝見させていただきます。
関連買取実績
-
2025.08.27
-
2025.08.25
-
2025.08.25
-
2025.08.22