
三代 歌川豊国(歌川国貞)による浮世絵「東海道五十三次の内 東海道 神奈川程ヶ谷間 志んまち 雁金文七(とうかいどう かながわ ほどがやかん しんまち かりがねぶんしち)」です。
「役者見立東海道」と呼ばれるシリーズ作品の一つで、手前に役者絵、背景に演目や登場人物に関係する宿場の風景(この場合は神奈川~程ヶ谷)が配されており、歌舞伎役者が「雁金文七」に扮している様子が描かれています。
雁金文七は歌舞伎演目「雁金五人男(かりがねごにんおとこ)」の登場人物で、元禄時代に大坂で実在したとされる無頼漢(侠客)の一団の頭目です。
歌舞伎や文楽(人形浄瑠璃)の演目では、実在の悪党団という側面よりも、彼らの「義侠心」や「男伊達」の精神が強調され、庶民のヒーローとして描くことで、単なる悪党としてではなく、悪人と戦い弱い者の味方をする善人として脚色し大当たりをとりました。しかし、侠客(きょうかく)として肯定的に描かれているのは文七と案の平兵衛(あんのへいべえ)のみで、他の三人は無頼漢的な色彩が濃く、否定的な描かれ方です。現実の無頼者をそのまま舞台に上げたのではなく、芝居としての見得・台詞・情を与えて、“観るに堪える人物”に仕立て、庶民の喝采を得たのです。
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