
月岡芳年による錦絵三枚続「義党退屯図」をお譲りいただきました。芳年は幕末から明治にかけて活躍し、武者絵・美人画・新聞錦絵など幅広い分野で優れた作品を残した浮世絵師です。その劇的で写実的な構図から「最後の浮世絵師」と称され、日本美術史においても重要な位置を占めています。
本作「義党退屯図」は、元禄赤穂事件、いわゆる忠臣蔵を題材とした場面を描いたものです。義士一行が吉良邸に討ち入り、首級を挙げた後、泉岳寺に引き揚げて主君浅野長矩の墓前へ向かう場面を再現しています。画面中央には大石内蔵助が指揮を執る姿が描かれ、間十次郎が槍先に掲げた首を供えるべく進む姿が印象的です。背景には雪景が広がり、義士たちが焚き火を囲む姿や寺僧の動きも細かく描き込まれ、事件後の緊張感と静けさが同居する独特の雰囲気を醸し出しています。
この作品に見られる人物の生き生きとした動きや群像の描写、そして雪景と炎の対比は、芳年ならではの構成力と表現力を示しています。忠臣蔵を題材とした錦絵は数多くありますが、本作は明治初期の社会背景を反映し、忠義と武士道を理想化する時代精神を映したものといえるでしょう。
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