
三代 歌川豊国(歌川国貞)による浮世絵「東海道五十三次の内 藤枝 熊谷直実(ふじえだ くまがいなおざね)」です。
「役者見立東海道」と呼ばれるシリーズ作品の一つで、手前に役者絵、背景に演目や登場人物に関係する宿場の風景(この場合は藤枝宿)が配されており、歌舞伎役者が「熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)」に扮している様子が描かれています。
熊谷直実は『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』の『熊谷陣屋(くまがいじんや)』が有名です。
熊谷直実は一ノ谷の合戦で平敦盛を討ったとして陣屋へ戻り、首実検に備える。源義経の前に差し出された首は、敦盛ではなく直実の子・小次郎のものであった。直実は敦盛を救うため、わが子を身替りにしていたのである。悲しみを胸に秘め、「十六年は一昔、夢だ夢だ」と無常を嘆き、直実は出家を決意する。
大義の前には、わが子の命さえも犠牲にするのが武士の社会。しかし、武士といえども子を討った悲しみは重く、直実が小次郎の首に驚く妻の相模と敦盛の母・藤の方を制する「制札の見得(せいさつのみえ)」には、その苦悩が表れています。戦の世の無常、人生の儚さが胸をうつ、重厚な名作です。
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