
三代 歌川豊国(歌川国貞)による浮世絵「東海道五十三次の内 神奈川 おふね」です。
「役者見立東海道」と呼ばれるシリーズ作品の一つで、手前に役者絵、背景に演目や登場人物に関係する宿場の風景(この場合は神奈川)が配されており、歌舞伎役者の四代目 岩井半四郎が「おふね(お舟)」に扮している様子が描かれています。
お舟は歌舞伎演目「神霊矢口渡(しんれいやぐちわたし)」の「頓兵衛住家の段(とんべえすみかのだん)」に登場する頓兵衛の娘です。
純粋な娘と極悪非道な敵役(かたきやく)の父緒やが対照的に描かれる義太夫狂言の傑作『神霊矢口渡』。物語の前半は、一夜の宿を乞いに頓兵衛の家を訪れた新田義峰(にったよしみね)にひと目惚れし、全身全霊で恋する気持ちを表現するお舟の様子が微笑ましく描かれます。しかし、父 頓兵衛が義峯の命を捕ろうとすると一転、お舟は恋と考との板挟みで苦しみ、義峰を父親から逃がすため身代わりになり切られます。たとえ父に立ち向かうことになろうとも、自らの思いを貫いたお舟の切なくも美しい姿が印象的な演目です。
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