
河井寛次郎
黒釉の深みある色調と独特の造形美を備えた、河井寛次郎作の扁壺をお譲りいただきました。胴部は平たく張り出し、肩から首にかけて直線的に立ち上がる形は、正面では方形的な安定感を、側面からは柔らかな曲線美を見せます。黒を基調とした釉薬に鉄分由来の赤褐色斑が現れ、焼成による自然な窯変が景色を作り出しています。
河井寛次郎(1890–1966)は民藝運動を代表する陶芸家で、中国宋代や朝鮮半島の古陶磁に学びつつ、日本の土と釉薬で独自の美を築きました。特に扁壺型の器形や、黒釉と鉄斑を組み合わせた落ち着きと力強さのある作品を多く手がけ、釉薬の偶然性を活かした表情豊かな仕上がりを特徴とします。
今回の作品も、黒釉の深い発色と赤褐色の窯変、造形のバランス感覚において寛次郎の作風が見られます。丸みを帯びながらも張りのある胴部、わずかに外反する口縁、そして釉薬の掛かり方や地肌の見え方は、民藝陶芸の美意識と実用性を兼ね備えた佇まいを感じさせます。
保存状態も良好で、艶やかな釉面と焼成痕が相まって、民藝愛好家の鑑賞にも十分応える逸品として評価させていただきました。
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