
朝井閑右衛門による油彩作品です。閑右衛門の持ち味である強い色面と即興的な筆勢が冴え、画面全体から生命感が立ち上がる一点です。
本作は、福禄寿と見られる白鬚の仙人を中心に、鶴、白鹿、亀、そして背後には大きな日の出が描かれています。鶴と亀は「鶴は千年、亀は万年」として長寿の象徴、白鹿は「禄(財・富貴)」を意味し仙界に通じる瑞獣として古来尊ばれてきました。これらが一堂に会することで「福・禄・寿」が揃った縁起尽くしの吉祥図となっています。
縁起物のモチーフを、西洋絵画的な色のリズムで再構成しているのが特徴で、赤・橙・黄の暖色を主調に、白と藍を置いてリズムを作る配色は同氏の定番の手法です。
筆致は、太い刷毛で面を一気にとらえ、上から硬めの絵具をナイフやコシの強い筆で置き重ねる厚塗りです。盛り上がった絵具の稜線が光を拾い、画面に躍動感を与えます。輪郭線は最小限に抑え、色の塊のぶつかりで形を立ち上げる点も同氏らしい特徴です。
また、白鬚や地面に見られる掻き落とし・引きずりのストロークも見事です。
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