
酒井三良による「瑞雪」です。本作は冬の情景を描いた水墨表現を基調とする作品で、雪景色の中に暮らす人々の姿を温かみをもって描き出しています。画面手前には雪に覆われた田畑が広がり、遠くには川を行き交う舟の姿が見え、生活の息遣いと自然の静けさが共存する構図が印象的です。小道を進む親子の姿は、厳しい冬の中にある人の営みとぬくもりを象徴的に映し出しています。
酒井三良(1899–1968)は、大正から昭和にかけて活躍した日本画家であり、山水画や風景表現において独自の詩情を築いた人物です。東京美術学校で学んだ後、自然への観察眼と叙情的な筆致を融合させ、伝統的な山水画に現代的な感覚を吹き込んだことで知られています。特に「雪」を題材とした作品は、清澄な気配と生活感の融合が巧みに表現され、彼の代表的な画題のひとつとなっています。
本作は墨の濃淡による表現と、わずかに添えられた彩色が、雪景色の冷ややかさと温かみを同時に感じさせる巧みな構成となっており、酒井三良の技量が遺憾なく発揮されています。
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