
こちらは豊原国周の梅幸百種之内「荵墳結梅実(しのぶづかむすぶうめのみ)しのふ(ぶ)売」です。
「梅幸百種(ばいこうひゃくしゅ)」とは、梅幸という歌舞伎役者が扮した100種の役を豊原国周(とよはらくにちか)が版画であらわしたもので、梅幸とは幕末から明治にかけて活躍した名優、五代目 尾上菊五郎の俳名です。全100図にわたって描き出した国周の晩年の代表作として知られています。
「しのぶ売」とは、江戸時代にシダ植物の「しのぶ(荵)」を籠に入れ、市中を売り歩いた行商人のことです。涼を呼ぶ夏の風物詩である「釣りしのぶ」などを売り歩く姿は、多くの時代小説や歌舞伎の題材にもなっています。作中では、おくみと恋仲の松若丸(本図左上 松若こと要助)としのぶ売りに変装して逃れる途中に、隅田川の土手で法界坊(作中の敵役)と野分姫の合体した怨霊にとりつかれた「おくみ」の偽物が現れるのですが、本図の表情からその偽物の方が描かれているのではないか…と感じます。
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