
こちらは三代 歌川豊国・歌川広重「双筆五十三次 江尻 三保 羽衣」です。
双筆五十三次は広重と三代豊国の合作で、広重が画面上部の「コマ絵(窓枠のような小さな枠)」に各宿駅の風景を描き、人物を三代豊国が描いた大判錦絵 全55図の連作です。
本図では、天女が天上に戻っていく姿を効果的に描くため、あえてシリーズの基本構造(コマ絵が上、人物が下)を上下逆になった構図をとっています。羽衣の伝説は日本各地で説話として語り継がれており、特に三保の松原の伝承が有名です。能にも取り入れられ、三番目物(優雅で美しい歌や舞を見せ場としている能)の「羽衣」として知られています。歌舞伎にも羽衣伝説の趣向は見られ、本図での天女の姿は、歌舞伎での天女の扮装を意識したものと思われます。三保の松原付近には天女が羽衣を掛けたと伝わる「羽衣の松」という樹齢650年に及ぶ松の老木があります。
江尻宿は18番目の宿場であり、駿河では府中に次ぐ規模の宿場として繁栄していました。清水湊には、海上運送業者の廻船問屋が集まり、大坂より木綿、油、綿、酢、醤油などの荷物を積込み商業活動をし、駿府町奉行が支配するお蔵が18棟も立ち並ぶなど、江戸へ物資を運ぶ重要な港として活気に満ちていました。
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