
こちらは豊原国周の梅幸百種之内「尾花比翼碍(おばなすすき ひよくのいしぶみ)寺西閑心 実ハ平井弥一」です。
「梅幸百種(ばいこうひゃくしゅ)」とは、梅幸という歌舞伎役者が扮した100種の役を豊原国周(とよはらくにちか)が版画であらわしたもので、梅幸とは幕末から明治にかけて活躍した名優、五代目 尾上菊五郎の俳名です。全100図にわたって描き出した国周の晩年の代表作として知られています。
享和3(1803)年初演の歌舞伎『幡随長兵衛精進俎板』、通称「俎板長兵衛」という芝居があります。そこに登場する幡随長兵衛の敵役が、「寺西閑心」です。寺西閑心という剣客が幡随長兵衛の家にやってきて、手下の土手助が長兵衛の息子の長松に額を怪我させられたと言い掛かりをつけ、土手助に熨斗を付けて台に乗せ進上し、長兵衛が匿っている白井権八を渡せと迫ります。実は閑心は権八の恋人小紫(本図左上)に惚れていて、権八から奪おうという魂胆なのですが、長兵衛は俎板の上に息子の長松を乗せ、「好きに料理してくれ」と言うので、閑心は長兵衛の侠気に感心して引き下がるという筋立ての演目です。
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