
こちらは豊原国周の梅幸百種之内「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)福岡貢(ふくおかみつぎ)」です。
「梅幸百種(ばいこうひゃくしゅ)」とは、梅幸という歌舞伎役者が扮した100種の役を豊原国周(とよはらくにちか)が版画であらわしたもので、梅幸とは幕末から明治にかけて活躍した名優、五代目 尾上菊五郎の俳名です。全100図にわたって描き出した国周の晩年の代表作として知られています。
伊勢音頭恋寝刃』は、1796年に伊勢の遊郭で実際に起きた「古市十人斬り」を題材にした歌舞伎・人形浄瑠璃の演目です。名刀と鑑定書をめぐる争い、そして遊女の心にもない言葉を真に受けた主人公が廓(くるわ)で引き起こす凄惨な殺傷事件(油屋の場)を描いた夏狂言の代表作です。伊勢参りで賑わう伊勢の地、今田万次郎が、主君から預かった名刀「青江下坂」と鑑定書を悪人の陰謀で失ってしまいます。万次郎の家来筋にあたる福岡貢が名刀を取り戻すべく奔走します。貢は遊女・お紺(本図右上)と恋仲でしたが、悪人の罠で彼女が心変わりしたと誤解。逆上した貢は妖刀「青江下坂」を手に次々と人を斬る悲劇を引き起こしてしまいます。主人公が振り下ろす刀の鋭さゆえに、真っ白な衣装が返り血で徐々に朱に染まっていく「凄惨美」が歌舞伎ならではの表現として高く評価されている演目です。
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